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2009.09.11

偏光顕微鏡を基本から学ぶ 【第4回】偏光顕微鏡の観察法

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偏光顕微鏡で異方体を観察する時は、通常コンデンサレンズの先玉をはねのけてNA(開口数)の小さい照明光で観察する。この観察をオルソスコープ観察という。また、結晶等の光学的性質を調べるため、偏光観察時に対物レンズの射出瞳上にできる干渉縞を観察することもある。この観察法をコノスコープ観察という。ここではオルソスコープ、コノスコープの観察法について説明する。

1.オルソスコープ観察

偏光顕微鏡の観察法のうち、標本面に対してほぼ垂直な方向の光(すなわちNAの小さい照明光)のみを当てて、その方向における光学的性質を観察する方法をオルソスコープ orthoscope観察という。オルソスコープ観察ではベルトランレンズを光路から外し、コンデンサレンズの先玉をはねのけるか、開口絞りを絞って観察する。

オルソスコープ観察にはポラライザとアナライザを直交させた直交ニコル観察と、ポラライザのみで観察する単ニコル one nicol観察がある。

1-1.直交ニコルによる異方体の観察

偏光顕微鏡は直交ニコル観察が最も一般的であり、生物の複屈折構造、岩石鉱物、液晶、高分子材料、エマルジョン等の異方性物質や、応力ひずみの観察が行われる。

図4-1 直交ニコルによる異方体の観察例

図4-1 直交ニコルによる異方体の観察例

1-2.干渉色とレタデーションの概測

光学的異方体の検査としてレタデーションの測定が行われる。レタデーションRは式1-2のように異方体の厚さと複屈折との積d(ne-no)で表される。レタデーションを測定することにより、厚さdが判っている標本に対しては複屈折(ne-no)が求められ異方体が何であるかを知る手掛かりになり、複屈折が判っている標本に対しては厚さを求めることができる。また、光学的ひずみのレタデーションを測定することにより、応力を解析することも可能である。

レタデーションは直交ニコルで標本を対角位にセットして干渉色を観察し、[第2回 1-2.異方体の干渉色]で述べた干渉色チャートを対比させて、判定することができる。しかし、この方法で得られるレタデーションの値にはあまり高い精度は期待できない。また、測定できるのは1次から2次ぐらいまでの鮮やかな干渉色を示す範囲に限られる。このため厳密な測定を行うためには第5回で述べるコンペンセータを使わなければならない。

1-3.検板の使用法
図4-2 伸長の光学性の判定

図4-2 伸長の光学性の判定

偏光顕微鏡の検板は以下のように使用される。

(1)鋭敏色観察

レタデーションの小さい異方体の偏光観察に鋭敏色検板を使用すると、色鮮やかな干渉色で観察することができる。鋭敏色近傍はレタデーションの変化に対して干渉色が急激に変化しているので、微小なレタデーションの変化を干渉色の変化で観察することができる。

(2)伸長の光学性の判定

[第2回 3.伸長の光学性]で述べたようにある方向に伸長している異方体に対しては伸長の光学性を判定することにより、未知の異方体を同定することができる。伸長の光学性の判定は、検板、コンペンセータを使用し干渉色の変化を見て行われる(図4-2)。

  1. 異方体を対角位にセットする。この時の標本の干渉色を干渉色チャートにより見ておく。

  2. 検板を検板差し込み口に入れて干渉色の変化を見る。干渉色が高次に変化すれば異方体のZ'方向が検板のZ'方向と一致しており、低次に変化すれば異方体のZ'方向は検板のZ'方向と垂直な方向である。異方体の伸長方向とZ'方向の関係により伸長の光学性を判定する。

1-4.単ニコル観察
図4-3 ベッケ線

図4-3 ベッケ線
結晶の屈折率>封入剤の屈折率の場合
a.ステージを少し下げた時のベッケ線
b.ステージを少し上げた時のベッケ線
(結晶と屈折率の屈折率の大小が逆の場合のベッケ線は上図の逆となる。)

アナライザを光路から外しポラライザのみを使用する単ニコル観察は、主に岩石鉱物に対して用いられる。直交ニコル観察では異方体干渉色で色づいて見られるが、単ニコルでは干渉色は見えず、このため本来の標本の色に近い観察ができる。単ニコルでは標本の形状、大きさ、色等を観察できる他、多色性 plechroismを調べることが行われる。

鉱物等の結晶の屈折率の推定にベッケ線 Becke lineを用いる方法がある。ベッケ線はコンデンサレンズの開口絞りを絞った時に、結晶と封入剤の間に見られる明るい線である(図4-3)。ベッケ線がはっきり見える場合は封入剤と結晶の屈折率の差が大きい場合であり、はっきり見えない場合は逆である。ベッケ線はステージを下げる(または、対物レンズを上げる)と屈折率の高い方に移動し、ステージを上げる(または、対物レンズを下げる)と屈折率の低い方に移動する。封入剤をいろいろ変えながらベッケ線を観察して、結晶と同じ屈折率の封入剤を求め、結晶の屈折率を推定する。

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