ホーム - 顕微鏡を学ぶ - 顕微鏡の基礎知識〜オリンパステクノラボ編纂冊子より抜粋・改変〜 - 【第5回】

2011.09.20

顕微鏡の基礎知識〜オリンパステクノラボ編纂冊子より抜粋・改変〜 【第5回】顕微鏡の光学原理 〜顕微鏡の能力〜

3.顕微鏡の能力

3-1.分解能と開口数

顕微鏡の性能は、標本を見やすい大きさに拡大できるかだけでなく、標本の細部を正しく見分けることができるかが重要なポイントである。これは、顕微鏡の分解能と開口数に大きく左右される。

分解能(resolving power)

顕微鏡の目的は、標本を細部に渡って十分に識別し、肉眼で見えるように拡大することである。このとき、微小な2点を見分けることのできる最小の距離を「分解能」と呼び、この距離が近いほど高分解能ということになる。
顕微鏡の分解能が不十分だと、見たい部分がぼんやりぼやけて見えてしまうため、正しい観察ができなくなってしまう。

開口数(NA:numerical aperture)

それでは、十分な分解能を得るためには何が必要かを考えてみよう。
顕微鏡で標本の細部まで見分けるためには、十分な明るさが必要である。そのためには、顕微鏡の光路に多くの光を取り入れることが必要になってくる。つまり、対物レンズがいかに多くの光を取り入れられるかが、十分な分解能を得るための条件となる。
対物レンズが光を集められる範囲を「開口数」という。開口数が大きいほど広範囲の光を集めることができるため、分解能も向上することになる。

図1 開口数と分解能の関係

図1 開口数と分解能の関係

レベルアップ:開口数と分解能の求め方
  • 開口数
    開口数(NA)は、対物レンズの仕様値の1つである。対物レンズは、液浸系と乾燥系に分類できる(第7回 2-1.基本仕様 参照)。液浸系対物レンズでは、開口数を求める場合、標本とレンズの間にある水やオイル(媒質)の屈折率(n)も考慮する必要がある。

  • 主な媒質の屈折率
    空気:1.0
    油浸オイル:1.52
    水:1.33

    図2 乾燥系対物レンズの開口数

    図2 乾燥系対物レンズの開口数

    図3 液浸系対物レンズの開口数

    図3 液浸系対物レンズの開口数

  • 分解能
    分解能(δ)は、下式から示されるとおり、開口数と波長にのみ依存する値である。

    画像

    λ:波長(一般に550nm)

コラム:いろいろな分解能

一般的に分解能とは、「違いを認識できる最小単位」のことを指す。したがって、機器によって分解能の定義は異なる。
たとえば体重計の場合、100g単位で計測できる機器であれば分解能は100gということになり、10g単位で計測できる機器ならば10gとなる。また、温度計であれば、分解能は1℃や0.1℃ということになる。
ただし、分解能は対象となる物体をどこまで細かく見分けられるかということなので、測定の正確さとは異なることに注意しよう。
視力検査に用いられるランドルト環(C字型の環)は、目から所定の距離だけ離れた位置にある物体に対する、眼の分解能を測る目安にもなる。すなわち、見分けられるC字の欠けている部分の幅が、その距離における眼の分解能とも言える。

3-2.倍率

倍率(M:magnification)とは、顕微鏡で見る像が実際の標本よりもどれだけ拡大されているかを示す比率のことである。
一般に倍率が高いほど、小さいものをより大きくして観察することができる。しかし、顕微鏡において注意しなければならないのは、単純に、倍率が高ければ標本がはっきりと(高分解能で)見えるわけではないということである。分解能が不十分であれば、いくら拡大しても標本の細部までは見えない。つまり、分解能が十分に得られている状態が確保できてはじめて、倍率が有効に機能するのである。

図4 同じ倍率による分解能の違い

図4 同じ倍率による分解能の違い

レベルアップ:顕微鏡の有効倍率の範囲

有効倍率とは、標本を正しく観察できる倍率の目安であり、開口数(NA)と顕微鏡の総合倍率(M)から下式の範囲が有効とされている(目視観察の有効倍率)。

画像

なお、「1000NA」を超える倍率は、見分けるために十分な倍率を超えてしまうので、「無効倍率」または「バカ倍率」と呼ばれている。

12