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2012.05.31

顕微鏡の基礎知識〜オリンパステクノラボ編纂冊子より抜粋・改変〜 【第7回】顕微鏡の構成と仕様 〜対物レンズ〜

2.対物レンズ(OB:objective)

2-1.基本仕様
図1 対物レンズ

図1 対物レンズ

対物レンズは、観察物の像を最初につくり出す部分である。顕微鏡の光学性能を決めるもっとも重要な機器であり、設計・製造には最高の精度が要求される。
対物レンズの基本仕様を学習し、観察対象や目的によって最適な対物レンズとは何かを理解する。

開口数(NA:numerical aperture)

分解能、焦点深度、像の明るさを決める要素である。開口数が大きいほど分解能が高くなり、明るい像を観察することができる(第5回 3-1.分解能と開口数 参照)。
対物レンズの倍率が高いほど開口数も大きくしてある。

倍率(M:magnification)

標本に対する中間像(倒立の実像)の倍率である(第4回 2-4.顕微鏡の結像原理 参照)。
低倍率(4×〜10×)、中倍率(20×〜50×)、高倍率(100×以上)のほか、極低倍率(2.5×以下)などがある。

作動距離(WD:working distance)

ピントを合わせたときの、対物レンズ先端から標本面までの距離をいう。開口数の大きい対物レンズほど作動距離は短くなる。

同焦点距離(PFD:parfocalizing distance of the objective)
図2 作動距離と同焦点距離

図2 作動距離と同焦点距離

ピントを合わせたときの、対物レンズ胴付き面から標本面までの距離をいう。国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)で定める規格があり、45mm、60mm、75mmなどがある。
同焦点距離は、対物レンズの倍率によらず一定なので、全長の短い(低倍系の)対物レンズは作動距離が長く、全長の長い(高倍系の)対物レンズは作動距離が短い。

カバーガラス厚

対物レンズには、カバーガラスの厚さが数値で記されている(2-4.表示 参照)。
カバーガラス標本用、ノーカバー標本用、カバーガラス標本/ノーカバーガラス標本共用との3種類がある。

液浸系と乾燥系

標本と対物レンズの間に液体を満たして観察する方法がある。この観察に使用する対物レンズを「液浸系対物レンズ」といい、液体には、イマージョンオイル、水、グリセリンなどが用いられる。対物レンズの鏡胴面には、「Oil」「W」「Gly」のように使用する浸液の種類が記されている(2-4.表示 参照)。
浸液などを使用せずに観察するときは、「乾燥系対物レンズ」を使用する。

機械的鏡筒長(MTL:mechanical tube length)

接眼レンズ取付け面から対物レンズ胴付け面までの距離をいう。対物レンズの鏡胴面には、有限補正光学系のものには、その有限値が、無限遠補正光学系のものは「∞」と記されている(第4回 レベルアップ:顕微鏡の光学システム 参照)。有限補正方式が採用されていた時代には、生物用には160mm、金属用には210mmと表示された対物レンズがあった。

レベルアップ:対物レンズの開口数

高倍率の対物レンズの場合は、倍率にふさわしい十分な開口数にするために、標本と対物レンズの間を液体で満たし、開口数を向上させている。使用する液体によって屈折率は異なる。

図3 乾燥系対物レンズの開口数

図3 乾燥系対物レンズの開口数

図4 液浸系対物レンズの開口数

図4 液浸系対物レンズの開口数

取付けネジ
図5 対物レンズ取付けネジ部

図5 対物レンズ取付けネジ部
(左:生物用 右:明暗視野用)

対物レンズの取り付けネジ径にはISOの規格寸法が採用されている(口径20.32、ネジピッチ36山/インチ)。そのほか、口径26、ネジピッチ36山/インチなどがある。

生物用対物レンズ:口径20.32、ネジピッチ36山/インチ
明暗視野対物レンズ(金属用):口径26、ネジピッチ36山/インチ