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2009.05.07

「現代の名工」に選ばれた、表面処理のプロフェッショナルに聞く 【前編】オリンパスの確かな技術は、職人気質と向上心あふれる人が支える。

遊び道具を手作りした幼少時代
ものづくりへの夢をオリンパスで実現、表面処理の達人に

このコーナーでは、さまざまなシーンでオリンパス製品を支える、技術者を紹介していきます。ものづくり現場で生き生きと働く技術者が、日々何を考え、困難にどう立ち向かっているのか。「現代の名工」の生きた言葉から見えてくるものがあります。

画像今回は、オリンパスの伊那工場で働く、樋代卓司(ひだい・たくじ)です。
樋代は、平成20年度「現代の名工」に選ばれました。この厚生労働省が管轄する「現代の名工」とは、昭和42年の創設以来、さまざまな技能の世界で活躍する人を表彰するもので、全国の技能者にとって大きな目標となっています。

樋代さんの新聞記事

長野日報
2008年11月11日記事より抜粋
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今回「陽極酸化処理めっき工」という職種で受賞した樋代は、長年、伊那工場で表面処理の仕事に携わってきました。数々の資格にも支えられた彼の優れた技能は、伊那工場の誰もが認めるところです。また最近では、金属表面処理職業訓練指導員として、内外の後進指導にも積極的に取り組んでいます。そこでまず、オリンパスで働くことになったキッカケや、表面処理という仕事について、話を聞きました。

「ものづくりは生活の一部だった。」
職人だった父の気質を受け継ぎ、オリンパスに入社

「末っ子の長男なので甘えん坊、やんちゃというよりは、おとなしい子どもでした。」と、幼少時代を振り返る樋代。当時は遊び道具を“買う”時代ではありませんでしたが、父親は風呂桶や漬物桶などを作る桶職人。家には桶の材料となる木や竹、そして「かんな」や「のみ」などの加工道具がたくさんありました。彼は父親から、道具の使い方から教えてもらい、いろいろなものを作って遊んでいたそうです。

「最初は父がお手本を示してくれました。刃物を使うので、『手を切ると痛いよ』、『こういう使い方は危ないからダメ』などと教えてもらいました。ケガをしながら、ものを作りながら、いろいろなことを覚えました。」ものづくりへの夢は、幼い頃から育まれたのです。

伊那工場

伊那工場

父親の仕事を継ぎ、桶職人になろうと思ったこともありました。しかし、工業高校で化学を専攻していた樋代が選んだのは、オリンパスで技術者として働く道でした。「小さい頃から父の仕事を見ていたので、仕事をするなら“ものづくり”をしたいと思っていました。工業高校で学ぶ中で、生産現場で働くことを自然に志しました。」

では、なぜオリンパスだったのでしょう。樋代は、「叔父がオリンパスに勤めていたんです。」と明かしてくれました。叔父さんは、週末になると、会社の同僚を家に連れてきては、楽しい話を聞かせてくれたのだそうです。「皆さんに可愛がってもらいました。」と言う樋代にとって、オリンパスはとても身近な会社だったのです。

「失敗に立ち向かい、ものづくりにつなげる先輩たちの姿を『すごいなあ』と思った。」
表面処理の仕事を極め、「現代の名工」に
アルミニウム部品

アルミニウム部品

現在担当している仕事について聞きました。
「私が主に扱っているのは、顕微鏡に使われているアルミニウム製品です。アルミニウムは腐食しやすいので、安定した皮膜を表面に付けるため『陽極酸化処理』を施します。」
『陽極酸化処理』とは、部品の中でアルミを酸化させて厚い皮膜を付けることをいいます。こうして加工されたものは、通称「アルマイト※」と呼ばれます。

こうした表面処理をメインの仕事としながら、今では後進の育成や指導にもあたっている樋代に、入社当時の様子を振り返ってもらいました。

「私が入った当時、アルマイト加工のラインは、まだ立ち上げの時期で、安定していませんでした。」そのため、いろいろな失敗があったのだそうです。失敗すると、定時に帰宅することはできません。原因を究明し、手直しをして、ものの組み立てにまで持っていく必要があるからです。夜遅くまで作業に取り組む先輩たちの姿。彼は、ものづくりに関わる者として、先輩たちに敬意を感じていたそうです。

そんな中、「現代の名工」に選ばれるほどの技術者となった樋代が、今でも“師匠”と思っている先輩がいます。「『取れる資格は全部取れ』と厳しく言われました。一緒に仕事をした期間は3年くらいですが、異動された後も『資格は取っているのか』と遠くから見守ってくれました。」正直なところ、彼自身は、試験はあまり好きではなかったとのこと。

しかし「落ちたくないですからね。」の心意気で、数多くの資格を取得しました。今となると、資格という一つの目標を持って仕事を続けてこられたのは、その先輩のアドバイスのおかげだったと感じるそうです。

樋代の資格取得は、周囲の人にもよい影響を与えました。現在、同じ表面処理のメンバーの資格取得率は、なんと93%もあるそうです。自分自身が優れた技能者であるだけでなく、周囲にも大きな影響力を持つ樋代が「現代の名工」に選ばれた背景には、こうした理由もあるのです。

アルマイト処理後のアルミニウム部品

アルマイト処理後の
アルミニウム部品

※アルマイトについて
アルマイトの身近な例としては、「やかん」や「サッシ」などに使われていますが、伊那工場で加工されたアルマイトは、オリンパスの顕微鏡部品として使われます。
顕微鏡にはさまざまな部分にアルミの部品が使われています。アルミは軽量で加工性が良いといった反面、やわらかくキズがつきやすい、腐食しやすいといった短所も持ち合わせています。これらの短所を補うための処理がアルマイト処理です。この皮膜は非常に硬く耐食、耐摩耗性に優れ、これらの特長を活かして製品の軽量化や耐久性の向上に役立っています。また、生成された皮膜の表面には非常に小さな穴が無数に開いているため、染料などによって染色できるといった特長もあります。

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