ホーム - ものづくりを支えるプロフェッショナル - 「行為のデザイン」を取り入れて開発した3D測定レーザー顕微鏡「LEXT OLS4000」 - 【第1回】

2009.06.11

「行為のデザイン」を取り入れて開発した3D測定レーザー顕微鏡「LEXT OLS4000」 【第1回】顕微鏡の常識を一変させた「行為のデザイン」とは!

一つの製品が世の中に出る。そこには、さまざまなドラマがあります。
3D測定レーザー顕微鏡「LEXT OLS4000」も、例外ではありません。
特に「LEXT OLS4000」の場合、工業デザイナーのムラタ・チアキ氏とオリンパスの開発チームが直接組み、ムラタ氏が提唱する「行為のデザイン」を取り入れました。外部のデザイナーをコンセプト作成という初期の段階から起用することは、90年にわたるオリンパスの顕微鏡開発史上、初の試みでした。

株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役 ムラタ・チアキ氏

株式会社ハーズ実験デザイン研究所
代表取締役 ムラタ・チアキ氏

もちろん、従来の商品開発でもユーザビリティ、すなわち顕微鏡の使いやすさについて、オリンパスはしっかり取り組んできました。しかし、「行為のデザイン」という観点でユーザーの動作を見直したとき、そこには新たな発見が数多くありました。

そこで今回は、ムラタ・チアキ氏と、ムラタ氏が率いる株式会社ハーズ実験デザイン研究所の柳瀬理恵子氏、伊勢誠氏、和田真吾氏に、「行為のデザイン」と「LEXT OLS4000」開発のプロセスについて、話を聞きました。

「行為のデザイン」とは

デザイナーになる前は、技術者だったというムラタ氏。彼の提唱している「行為のデザイン」とはどんな方法なのでしょう。一般的に言われるデザインとは、どう違うのでしょう。

「行為のデザイン」は“メソッド”である
「行為のデザイン」が反映された消しゴム

「行為のデザイン」が反映された
消しゴム

ムラタ氏:
「行為のデザイン」とは、デザイン開発をする際の「メソッド」、つまり、さまざまな開発手法のうちの一つです。
いろいろな企業と商品開発をするとき、従来は企業で形や中身が決まったものに対し、デザイナーがハウジングするのが一般的でした。つまり、ケースを作っていた、ということです。どうせ作るなら外見もオシャレにしたいよね、というのがデザインの主流だったのです。

ところが最近は、実はそうじゃないと言われています。ケースよりももっと深い部分、例えばユーザビリティやユニバーサルデザイン、使っていてどう感じるかといったメンタル面。つまり、オモテに表れてこないような「ファクター」が、デザインではいちばん重要なんだと、だんだんわかってきたのです。

「行為のデザイン」が反映された掃除機

「行為のデザイン」が反映された
掃除機

これは、プロダクトの進化によるものです。白物家電の「三種の神器」の一つと呼ばれていたころの洗濯機と、今の洗濯機を比べると、はるかに進化していますね。同様に、さまざまなものが進化をとげてきた背景には、ケースをかぶせるだけではないデザインというものが、やはり中心にあったと思います。

そうなると、どういった手法を使えば、デザインと技術がうまくマッチングできるかが、開発プロセスにおいてとても重要になってきます。従来のように、技術開発が終わってその後デザイナーに渡されるという、バトンタッチリレー方式では、なかなかうまくいかない。

そこで我々は、開発の初期段階からデザイナーが深く関わるようにしています。それが「行為のデザイン」の「ワークショップ」です。

ここで注意する点は、製品について我々は素人である、ということ。シロウトがどこまで参加できるのか。
我々は、「行為のデザイン」というメソッドを持ち込みます。そこにファクターを持ち込むのはエンジニア、今回ならオリンパスの皆さんである、と考えています。つまり、我々の仕事とは、オリンパスに内在するチカラを引き出し、そのチカラを使ってさまざまな情報をコーディネートすることなのです。

「行為のデザイン」ならブレのないデザインが可能

ムラタ氏:
個人で使う道具に対しては好き嫌いが言えます。でも、こと医療機器や、専門性の高い機械では、デザインの影響で精度が出なかったり、デザインが足を引っ張ったりしてはダメ。まず、機能として満足するものがあり、さらにデザインすることでより使いやすいものになる、というのが、一番望ましいわけです。

しかし、まだまだそこまでいっていない製品が世の中には多い。とはいえ、非常に複雑な知識が必要な製品になればなるほど、多くの人がデザインを避けて通ろうとします。今回の「LEXT OLS4000」も、そういう難しい製品だったんじゃないかと思います。

ワークショップ

ワークショップ

そこで我々は、ファクターを引き出すようなシカケをします。デザイナーである私たちには内在するチカラはないので、オリンパスの専門家たちのチカラを引き出すのです。そのために、ワークショップという形をとります。

「行為のデザイン」がメソッドとして優れている点に、“4つのファクターを特定化する”、ということがあります。その4つとは「人」、「対象物」、「時間」、「空間」です。

ある人が、ある特定の商品に対して、何かの行為を、ある特定の時空で行う。この程度までファクターを絞り込むと、その人の行動が読めてきます。例えば「次はどうするの?」とか、「この状況だと、セキュリティ上、最初に認証から入らないとダメ」といったことが分かってくるのです。だから、「認証キーが必要」と分かる。さらに、「でも、複数の人が使う場合も本当にそれでいいの?」と深めていく。

ワークショップ

ワークショップ

私は「ひずみ」と呼んでいますが、英語なら「バグ」。ワークショップの最初の段階では、4つのファクターを使い、いろんなケーススタディを考えて、バグを見つけます。「今のままでも、すごくいい顕微鏡だけど、これにも絶対バグがあるはず」だと。バグを見つけるのは、ソリューションに一歩近づくことを意味します。

ワークショップ

ワークショップ

バグが見つかったら、今度はそれを解決するアイデアを、またみんなで追っていきます。「これはいいね」「オリンパスとしては、将来に渡ってやっていきたいね」「でも、5年以上かかるから中長期的な計画にしよう」「これはなんとか、今度の製品に入れたいね」というように、プライオリティ(=優先順位)を付けるのです。

プライオリティを付けると同時に、クラスター化(=分類)も大切。似た内容のアイデアをまとめるのです。

OLS4000ラフスケッチ

OLS4000ラフスケッチ

プライオリティ付けとクラスター化をしながら、アイデアをまとめていくと、最終的にバグは適度な数に落ち着きます。あとは、ハードウエアに関連するのか、ソフトウエアか、インタフェースなのか、といった部分を大きく分けてまとめ、そこから「コンセプション」(=製品のコンセプト)を出していきます。

従来、多くのデザイナーがとってきた手法では、先に造形を出します。ですから、最終形が、本来の方向性とはまったく異なってしまうことがあります。しかし、「行為のデザイン」をメソッドに使い、ワークショップでコンセプションまで出して、そこから出てきたデザインには、ブレがありません。

次回は、「行為のデザイン」を産業機械に融合させたプロセスを公開します。

株式会社ハーズ実験デザイン研究所

LEXT OLS4000グッドデザイン賞受賞のお知らせ

製品情報 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4100お問い合わせ
1