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2009.08.07

地方発!先進の画像測定ソフト開発メーカー社長に聞く 【後編】もの作り現場のニーズは時代とともに変化する。ITを上手く活用し、人にしかできないクリエイティブなもの作りを目指せ!

前編に続き、株式会社イノテックの伊藤賢治(いとう・けんじ)代表取締役社長に、日本のもの作り現場について語ってもらいました。

株式会社イノテック 伊藤社長

株式会社イノテック 伊藤社長

イノテックは、オリンパスの画像測定顕微鏡システム「STM6-PLUS」に搭載されているソフトウエアを開発している広島の会社です。「STM6-PLUS」では、観察・撮影・測定、そして、それらをまとめたレポートの作成まで、一連の作業をモニタ上で可能にした測定システムです。

「STM6-PLUS」の詳細はこちら

従来の測定顕微鏡による測定は、多くの部分を人手で行う作業でした。「STM6-PLUS」はITを活用し、従来とは一線を画す測定となっています。導入したユーザーからは、「転記ミスをはじめとする人的エラーが減った」といった声が寄せられます。このような声を直に聞いてきた伊藤氏は、最近のもの作り現場にどんなニーズや問題点を見い出し、どう解決していこうと考えているのでしょうか。

「匠の技や神の目をシステムに置き換えたい、という相談が寄せられます。」
最近のもの作り現場におけるニーズとは

画像 日本のもの作りを支えているのは、多くは中小企業です。大企業ではすでに当たり前の「IT化」も、中小企業にとっては今でも直面している課題の一つです。例えばOSのバージョンにしても、発売後10年以上も経ったWindows 98を使い続けている中小企業は、まだまだたくさんあります。

しかし、古いOSやパソコンは、メーカーのサポート対象から徐々に外れていきます。「特注の依頼には、『今はまだWindows 98のパソコンを使っている。これが壊れる前に、同じことができるソフトを作ってほしい』といった内容が多いですね。」と、伊藤氏は言います。
ただし、ほとんどの場合、仕様書などソフトに関する資料は、何も残っていないとか。伊藤氏をはじめイノテックのスタッフは、現在のソフトを実際に触りながら、新しいパソコンでも同じ動作になるソフトを作ることもあるのだそうです。

製造現場

製造現場

ひと昔前なら、パソコンやシステムを導入するのは、コストを下げるなど効率化を図ることが目的でした。しかし最近では、「人が頻繁に入れ替わるので、人がしていた仕事を機械にやらせたいと考えているようです。」伊藤氏は、時代の流れとニーズの変化を、敏感に感じています。

「ここ2年くらい特に増える傾向にあるのは、団塊の世代を中心に熟練した技術者が退職するので、そのノウハウをソフトに置き換えたい、というものです。」熟練者が持つ「匠の技」や「神の目」を新しい世代に伝承するため、“人”が担当するのではなく、“パソコンやソフト”を使って、熟練者と同じ結果を誰でも出せるようにしてほしい・・・現場はそう考えているのです。

ただし、そうした思惑は、会社として必ずしもよい結果に結びつくとは言えないようです。熟練者の中には、技術を教えてしまうと自分の仕事がなくなるのではないかと恐れ、一切教えることなく定年退職を迎える人も少なくないとか。会社のためならばと、自分のノウハウを全部伝承しシステム化に役立てようとする人よりも、自分の技術は自分のものと封印して退職する人の方が多い、というのが伊藤氏の実感です。

「もの作りに対する責任感やコダワリが、薄れてきているように感じます。」
もの作り現場の近況、変化。そして、抱えている問題

では、もの作り現場におけるこのような問題は、どのような背景から引き起こされたのでしょうか。伊藤氏はまず、雇用に問題があると指摘しました。

イノテックと付き合いのあるもの作りの現場は、品質管理や出荷検査といった部署が多く、「正社員は管理者のみ、実務を担当するのは派遣社員やパート、といった体制ですね。」とのこと。特に最近は不況の影響が大きく、「皆、いつ“切られる”のかと雇用期間にばかり神経がいってしまい、良いものを作るためにじっくり取り組もう、という考えを持てないようです。」と、切実さが増しています。

3年かけて良い製品にしていこうと考えても、半年後に自分が働いていられるかどうか分からない状況では、仕事の仕方がどうしても場当たり的になってしまうのです。

人による地道な技能伝承

人による地道な技能伝承

一方、現場の管理者も、違う立場での不安を抱えています。経費削減が叫ばれる昨今、現場の人員配置は、派遣社員やパートを中心に組み立てなければなりません。非正規のスタッフを教育し、匠の技や神の目を伝授しても、辞めてしまう人は後を絶ちません。ずっと働いてくれる保証がない人を教育するよりも、匠の技や神の目をシステムに置き換える方が、現場に長く残って役に立つ、というわけです。

現場がこのような状況になってくると、もの作りへの責任感やこだわりが失われる、と伊藤氏は警告しています。もの作りの現場を長く見ている伊藤氏は、以前は自分たちが作る製品に対して愛着を感じ、誇りと自信を持っている人がもっと多かったと感じているそうです。しかし最近では、「作業があまりにもルーチン化してしまい、同じようなものができていれば問題ない、といった甘えが出てきているのでは。」と指摘します。

伊藤氏のポリシーの一つに、「他人のせいにしない」ということがあるそうです。しかし、「製造業に限らず、自覚を持って仕事に臨む人が減っているように感じます。『私の責任ではない』などと言う人も増えているのでは。」これは、とても残念なことではないでしょうか。

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