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2010.09.28

特集:裾野が広がる共焦点顕微鏡〜実装技術ガイドブック2009(工業調査会 2009年発刊)寄稿文書より転載〜 3D測定レーザー顕微鏡OLS4000による3D表面性状計測

1.はじめに

表面の加工技術が飛躍的な進歩を遂げる中で、加工面の表面性状を高精度に計測することがますます重要になってきている。一般的に表面性状を測定するには、触針式表面粗さ測定機が古くから使用されており、触針先端と機械的な接触を保ちながらサンプル表面をなぞるため、測定データの信頼性が高い。

一方、レーザー顕微鏡は“高解像な顕微鏡”として、主に観察用途として発展を遂げてきた。近年ではこれを3D表面性状の測定を行うための“測定機”として使用することが多くなっている。レーザー顕微鏡で3D表面性状の測定を行うメリットとして、以下のようなことが挙げられる。

  • 短時間(数十秒程度)で情報量が豊富な面計測ができる

  • 非接触、非破壊、柔らかい測定対象物も測定できる

  • 狙った微細個所をピンポイント測定できる

さらにレーザー顕微鏡は、ほかの光学式測定機に比べ、水平(XY)方向、垂直(Z)方向の分解能バランスに優れるため、微細な表面性状測定に適性がある。その反面、測定データには触針式では現れない突発的なピークノイズを含むことがある。これは光学式測定機特有の異常値※1と呼ばれる現象であり、異常値は正常に測定されたデータとの分離が難しい。このため測定データの信頼性という点においては、触針式には及ばないのが現状であった。

レーザー顕微鏡を“顕微鏡”の枠を越えて“測定機”として使用するためには、異常値の対処を行うとともに、測定性能やデータの信頼性といった測定機としての特性を明らかにすべきである。そこで本稿では、新たに開発した3D測定レーザー顕微鏡OLS4000(図1)の測定性能、データの信頼性について述べる。

図1 3D測定レーザー顕微鏡OLS4000

図1 3D測定レーザー顕微鏡OLS4000

2.OLS4000の測定データの信頼性

測定データの信頼性を向上するために、新規開発したOLS4000では共焦点光学系を刷新した。以下に、その測定データの信頼性について述べる。

2-1.軸外性能と斜面検出データの信頼性向上

OLS4000において、主に計測用途として使用する20×、50×、100×対物レンズについては、レーザー光源波長405nmで最適な収差性能が発揮できるように調整された専用対物レンズを新規開発した。図2は、専用対物レンズと通常の光学顕微鏡で使用される同一NAの対物レンズよる測定結果を比較したものである。
サンプルは、公称周期10μm、振幅0.3μmの正弦波断面を持つサンプルである。通常の対物レンズの場合、光軸付近は公称値どおりの正しい測定結果となるが、視野の周辺部では実際よりも大きな振幅として測定されてしまう。これは光源波長405nmにおける光軸と視野周辺での収差性能の違いによるものであり、この現象はサンプルの傾斜角度が大きいほど顕著であった。

図2 高さ測定結果に及ぼす光学系の収差の影響

図2 高さ測定結果に及ぼす光学系の収差の影響
(対物レンズ:共に20×NA0.6、サンプル:Rubert社製 No.529)

一方、405nm専用の対物レンズを用いた場合、このような挙動は見られず、視野周辺でも正しい測定結果となった。OLS4000において、使用する光源波長で最適に調整された光学系を採用する理由は、解像限界付近での測定最高性能を向上させるという目的よりも、むしろサンプルの微細凹凸形状が作る局所的な傾斜といった、一般的な測定対象物に多く存在する形状に対して、全視野にわたって信頼性の高い測定を行うためのものである。

図3は、傾斜部測定時の測定誤差を評価するためにφ153μmの工業用の精密ルビー球の測定結果について評価したものである。図3(a):NA0.95の50×対物レンズを用いた場合で約80°、図3(b):NA0.6の20×対物レンズで65°の傾斜角度まで測定可能であった。
理想R形状に対する形状誤差成分を見ると、検出限界角度付近では検出信号の微弱化によるランダムな検出位置の乱れは見られるが、その量は数μm程度である。十分な検出信号が得られると思われる約30°傾斜部までのデータを見る限り、その誤差は図3(a)でサブミクロンオーダー、図3(b)で1μm程度と小さく、良好な測定が行われていることが確認できる。

図3 傾斜サンプル測定時の検出限界角度と誤差

図3 傾斜サンプル測定時の検出限界角度と誤差

2-2.異常値の低減

図4は、従来機種と新規開発したOLS4000でのランダム粗さ標準片(Rubert 社製No.502)の同一個所の測定結果を比較したものである。測定データには、後述するようなフィルター処理や平均化処理などはまったく行わず、測定機からの出力データをそのまま使用している。
比較データとして触針式による測定結果も併記した。

>図4 ランダム粗さ標準片の測定結果比較

図4 ランダム粗さ標準片の測定結果比較(サンプル:Rubert社製 No.502)

従来機種は通常の対物レンズ、新機種OLS4000は405nm専用の対物レンズを用いている。前者は光学式特有の異常値(図中丸印)と思われる突発的なピークノイズが散見されるが、後者ではそれが少なくなっている。これが、専用光学系による収差性能向上の効果であると考えている。

さらに、後者での結果は高周波のノイズ成分が小さくなっている。これは新機種OLS4000において、受光系アンプ特性改善や装置小型化による高剛性化といったシステム全体のSN 比向上策の結果である。

以上で述べたように、専用光学系による収差性能の改善は異常値の発生を低減させる効果があり、これと併せて行ったSN比向上策により、OLS4000で得られる測定結果は信頼性が高いといわれている触針式の結果とかなりの一致を示すようになった。

2-3.触針式表面粗さ測定機とのデータの等価性

触針式の測定標準(JIS B0632:2001)では、サンプルの特定の凹凸周期(以下、波長と呼ぶ)成分を、位相補償フィルター処理により抽出してから、各種解析を行う規定となっている。粗さパラメーターを求める場合には、有限サイズの触針先端半径に起因する不確かな短波長成分の除去(λsフィルター)と、うねりなどの長波長成分を除去(λcフィルター)したデータ(粗さ曲線と呼ぶ)を使用してパラメーター演算が行われる。
この規定によって統一された波長帯域のデータによる粗さ解析が行われるので、触針式粗さ測定機間の測定結果の等価性が保たれる。

図5は、触針式の測定標準で規定されるフィルター処理をレーザー顕微鏡の測定データに適用して、粗さ曲線を抽出した結果の一例である。図6は、抽出した粗さ曲線から求めた粗さパラメーターRa、Rzについて触針式での結果と比較したものである。
なお、図4(b)で示したように、50×NA0.95の対物レンズを用いた場合には、フィルター処理前の段階でレーザー顕微鏡と触針式での断面プロファイルはほとんど一致していたため、図5、図6においては、これよりもNAの小さな20×NA0.6による結果も記載した。サンプルはJIS B0659-1で定義されているタイプDの粗さ標準片(Rubert社製、Halle社製、日本金属電鋳社製)を用い、レーザー顕微鏡の測定結果はステッチング(画像つなぎ)処理を行うことで測定長を確保した。

図5 OLS4000と触針式表面粗さ測定機による粗さ曲線の比較

図5 OLS4000と触針式表面粗さ測定機による粗さ曲線の比較
(フィルター条件:ls/lc=0.0025mm/0.25mm、サンプル:Rubert 社製No.504)

図6 OLS4000と触針式表面粗さ測定機による粗さパラメーターの比較

図6 OLS4000と触針式表面粗さ測定機による粗さパラメーターの比較

図5から微細表面性状計測用途としては、NAの小さな20×NA0.6の条件においても、触針式での結果とほぼ一致した粗さ曲線となっていることが分かる。粗さパラメーターを比較した図6でも、レーザー顕微鏡の2つの測定条件においてRa、Rz共に良い相関を示した。

以上のように解析する波長帯域を統一することにより、測定原理の異なる測定機であってもデータの等価性が確保できることが分かった。

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