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2011.02.08

特集:NIKKO Green MOOK〜電子デバイス技術の行方(日本工業出版 2010年発刊)より転載〜 今、最も注目される急成長LED産業 〜設備投資すれば、直ぐ生産できるのか?〜

現在、半導体業界で最もホットな話題はLEDであろう。白熱電球や蛍光灯に替わる省エネ照明に期待されていたが、液晶のバックライトに使用されて爆発的な数量が要求されている。しかしその生産技術は簡単ではなく、高品質の製品を歩留まり良く生産するのは難しい。今回、オリンパス株式会社の協力を得て、LED製造の問題点を探ってみた。

はじめに

現在、半導体設備の中で最も投資が急増しているのがHB-LED(High Bright Light Emitting Diode)用である。MOCVD(Metal Organic Chemical VaporDeposition)装置に至っては、今発注しても納入は2年先などの噂もある。

LEDは数年前から一般照明用として蛍光灯の効率に近くなり、寿命も4万時間と言われて普及が期待されているが、PCや液晶テレビのバックライトに使われて、急速に需要が拡大している。液晶テレビへの使用方法は、画面全面に敷き詰める直下方式と、画面端に並べて導光板で全面を照射するエッジライト方式に分かれている。平均すると、1台に200個、大型だと500個ものLEDが使われ、1億台のテレビに用いられると、200億個/年のLEDが必要になると言われる。

これまでに市場が無かったゼロからの急拡大だけに急速な投資が必要になった。しかし、投資をすれば直ぐにLEDが生産できるのであろうか?そんな問題点を意識しながら製造プロセスを調査した。

LEDの発光原理と得られる波長

半導体のPN接合に順バイアスし接合部で電子と正孔が再結合すると熱と光が発生する。発光波長をλ(単位;nm)、バンドギャップをEg(単位;eV)とすると、λ=1,240/Egの関係にある。従って、バンドギャップEgを変えると、色々な波長の光が取り出せる。

現在、話題になっている白色LEDの場合は、n-AlGaN/GaInN/p-AlGa N構造の図1のようなダブルへテロ接合が用いられる。AlGaNのEgはGaとAlの混晶比にもよるが大体2eV程度であり、GaInNのEgはInの比率で異なるがそれより小さい。そこで、接合に注入された電子と正孔はバンドギャップの小さいGaInN層に集まり再結合が起こり易く、発光効率が向上する。光の波長を変えるには、Inの組成を変えればよいが、逆に言えば、組成がバラツクと発光波長がバラツクことになり、製造ではかなりの問題点となっている。なお、300nm程度の短波長にはAlGaInNが用いられる。

図1 ヘテロ接合のバンド図

図1 ヘテロ接合のバンド図

白色光を得る仕組み
図2 白色LEDを得る3方式

図2 白色LEDを得る3方式

白色光を得る方法は、主として図2の3通りの方法がある。

(1)RGBの3色のLEDを並べると白色光が得られるが、LEDは一般に波長のバンド幅が狭く、ある特定部分の成分が欠落してしまう。我々が物体をみるのは反射光を見るので、照射した光に或る特定のスペクトル成分が欠落していると、正しい物体の色が見られない。これを演色性と言ってRa(Average Color Rendering Index、CRIと表記されることもある)で表されるが、RGBの3チップ方式ではRaは50%と良くないと言われている。

(2)青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせでは、赤系統の成分が欠落し、Ra=60〜70%と言われている。この場合、人の顔色などやや赤みが不足し、肉や魚が新鮮に見えないので、これらの商店の照明用には避けた方が良い。ただ、最近は蛍光体の進歩によりRa=80%程度のデータも出ている。

(3)近紫外LEDでは、フォトンのエネルギーが大きいので、蛍光体からRGBの光を取り出すことが出来て可視光の全ての波長帯をカバーするので(Ra=100%)、演色性については理想に近い光源と言える。現在、一般照明用に市販されているのは、(2)と(3)であるが、輝度とコストは(2)が良く、演色性を選ぶなら(3)と言うことになる。

LEDの製造プロセスの概略

製造プロセスの概略を図3に示す。まず、サファイア基板の上にフォトレジストをマスクにしてPSS(Patterned Sapphire Substrate)と呼ばれる3μm程度の大きさのドットパターンを形成する。化合物半導体をMOCVDで推積し、最上部は透明導電膜を付け、図3(d)のように一部分をメサ状にエッチングして電極付けを行い、表面に保護膜を被せた後、レーザーでダイシングし、パッケージに収める。

※ メサとは、アメリカの砂漠などに見られる台地状の場所で、半導体の初期の頃、メサ状のトランジスタが生産されたので、古い人には馴染みの言葉である

図3 LED製造プロセス・フロー

図3 LED製造プロセス・フロー

サファイア基板の製作

サファイアはアルミナ(Al2O3)の単結晶で、シリコンのようにCZ法(Czochralski法)で引き上げることも出来るが、後の加工が楽なのでEFG法(Edge-defined Film-fed Growth法)がよく用いられる。これはリボン結晶とも呼ばれ、図4左のようにAl2O3溶液がスリットを通って上昇し、連続的に引き上げるとリボン状の単結晶になる。結晶欠陥の密度は、CZ法が少なくて優れているが、LEDの性能に余り大きくは影響しない。

また、サファイア基板は、結晶軸を少し傾けた方が平坦度の良いGaN層が得られる。このオフアングル(Off Angle)は、0.15〜0.2度程度がよく、図4右のような表面の構造になっており、これを調べるには、AFM(Atomic ForceMicroscope)が用いられる。

図4 リボン状結晶の引き上げと、表面のOff-Angle

図4 リボン状結晶の引き上げと、表面のOff-Angle

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